手活けの花

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太股を触られた翌日、美容室にセットに行った女を男はそう悪びれる様子もなく待ち伏せた。 「寿司は好きか」 女はコクリと頷く。 そうやって始まったのだ。 新地にいる時ほど贅沢な生活はしていない。 しかし店を持たして貰えるとは思っていなかった。 女に対し男は言う。 「俺も暇じゃないからな」 女は知っている。 男には自分以外にも“女”がいることを。 男は気に入った女に皆店を持たす。 一番最初の女は男とそう歳が変わらない女だった。 元町でクラブをやっている。 二番目は女の元雇い主。 三番目は自分だ。 女はもうこれ以上男に女を増やさせないように細心の注意を払う。 別に男の女道楽は何も思わない。 そんなとこで※悋気しても仕方ない。 女は男にとって終生(つい)の女でありたかった。 最後の女でありたいだけだ。 妻になろうなんて思ってなぞいない。 多くは望まない。 女は今までの人生でそれを習った。 ※悋気(リンキ) 恋愛・情事などに関することで相手をねたむこと。
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