~第壱話~

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 泣きじゃくる娘を抱き上げたまま、鬼は住み家へ引き上げてゆきました―― ――村人は庄屋の家に集い、鬼退治の為、攫われたままの娘を助ける為、団結しました。  そして、鬼への貢ぎ物の酒に、眠気を強くする草を絞った液体を混ぜ、鬼が眠りこけた隙に娘を助けだし。  二度と鬼が悪さを出来ないように、閉じ込めてしまいました。  村に連れてこられた娘は、庄屋の若旦那と結ばれ、その時に気付いたのです。 『あの鬼様が、私を幸せに――』 「――ぅあぁぁ……」  切り裂く様に哭く雪風の中、慟哭噎ぶ鬼が居る。 「ああぁあぁぁぁぁあっ!! 何故………何故だあぁぁぁぁぁあぁぁあっ!!」  白に拡がる紅、その紅は降りしきる白に消え、それでも尚、鬼は慟哭に噎ぶ――
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