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数秒が経過する。
違和感を感じた。
まるで時間が止まったようだ。
本当に止まっているのかもしれない。
オルガンがやんでも、杏奈は卓から手を離そうとしない。
「…手を」
牧師が小声で杏奈に囁く。
それでも杏奈は下を向いたまま、固まって動かない。
表情をうかがおうにも、ベールが邪魔をしている。
「…杏奈」
正嗣が声をかけたが、杏奈は顔を上げなかった。
その代わりに、卓の手を掴む。
そしてその手を、正嗣に向かって大きく差し出した。
周囲がはっと息を呑む音が聞こえた。
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