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天窓から差し込む光が空席を照らす、幻想的な世界が広がっていた。
長いヴァージンロードの向こう側に、緊張した背中が見える。
オルガンが奏でる音楽に合わせ、ゆっくり一歩踏み出した。
高い天井に目眩がする。
空席をひとつ、ふたつ
追い越していく。
半分くらい歩いたところで、正嗣が振り返った。
何故だろう。
卓の心臓が騒ぎ出す。
杏奈の手を正嗣に渡したら、全てが終わる。
他の誰でもない、卓自身が望んだ結末だ。
それなのに何故こんなにも、泣きたい気持ちになるのだろう。
空っぽのチャペルにオルガンが共鳴する中ついに、正嗣の前に立った。
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