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杏奈がきゅっと口許を結んだ。
それから、表情を隠すように二人に背を向けた。
「明日出発だから、あたし行くね。」
合間に大きく鼻をすすった。
「正嗣」
ウェディングドレスを握る。
「卓のこと、頼んだからね」
言い終わらないうちに、走り出した。
振り返る事なく、ヴァージンロードを遠ざかっていく。
姿が見えなくなり、ハイヒールの音が聞こえなくなっても、
残された人たちはただ、百合の香りが残る中で、呆然とするより他なかった。
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