2466人が本棚に入れています
本棚に追加
予定ではもっと軽々と走り去るはずだったのに、ウェディングドレスは意外と重い。
息を切らせて廊下を駆け抜け、なんとか控室前までくると、
ドアに、スーツ姿の男が寄りかかっていた。
「…呼んでないわよ」
「うるせえ」
言葉は悪いが、関の声は穏やかだ。
黙ってしまえば、杏奈の息だけが廊下に響く。
「りゅう」
呼吸の合間に、声を挟む。
「あんたなんか大嫌いだけど…二人の事、教えてくれてありがとう」
それ以上は喋れなかった。
止めどなく大粒の涙が溢れ、嗚咽が喉をふさいだ。しゃがみこむ杏奈を、関が横目で見る。
「本当にこれでよかったのか」
「…わかんない」
関が杏奈に合わせてしゃがんだ。骨ばった手で杏奈の背をさする。
「ちがくてさ。やっぱ俺が、意義あり!って花嫁を拐うべきだったかなって」
優しい冗談。
「ドラマの見すぎ」
杏奈は顔をあげて、泣きながら笑った。
最初のコメントを投稿しよう!