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牧師の前に、置いてきぼりの男が二人。
たった今花嫁が走り去った先を、呆然と見つめる。
「新婦の方が一枚上手でしたね」
声に驚いて振り向くと、牧師が肩をすくめて聖書を閉じた。
「後は、お二人で」
正嗣と卓を交互に見ながら、薄いメガネのレンズ越しに、少しだけ微笑んだ。
途端に現実が呑み込めてしまい、一気に顔が火照る。
牧師に続いて、他の人たちもパタパタとその場を去っていく。
「やっぱり、姉ちゃん呼び戻して来ます」
なんだか悔しかった。
杏奈にはいつだって敵わない。
「正嗣さんはここで待っててください」
呼び戻しに行ったところで、無駄な事だとなんとなく分かっていた。
それでもそうせずには居られなかった。
卓にとって、けじめをつける最後のチャンスだった。
今ならまだ間に合う気がした。
「卓」
追いかけようとする卓の腕を、正嗣が強く引き寄せた。
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