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「…離してください」
引いた腕をそのまま抱き込むようにして、正嗣は卓を胸に抱き締めた。
「やっぱり間違ってた」
正嗣の声が耳元で鳴る。
あまりに大きく心臓が脈打って、緊張が伝わってしまいそうだ。
「離してください…!」
なぜ今こんなに正嗣を拒む自分がいるのか、卓はもう分かっていた。
終わるのが怖かったんじゃない。
未来がないと知りながら、ちゃんと始めるのが怖かった。
怖くてしかたがなかった。
曖昧にしておけたのなら、どんなに楽だろう。
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