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「…はなして…」
「卓…!」
うわ言の様に繰り返す卓の顔を、正嗣の両手が掴んだ。
額と額を合わせると、呼吸が交わる。
今にも触れそうな距離で、同じ空気を吸う。
近すぎて表情は見えない。
しかし声だけで十分だった。
「…言えよ…」
たった一言。
それに込められた正嗣の思いが全部、なだれ込んでくる。
くすぶっていた愛しさがどっと押し寄せて、卓の体を支配した。
「…正嗣さん…」
怖々と名前を口にしたら、もうどうしようも無かった。
「…キスし…」
その一言を待ちわびていたかのように、唇が重なる。
正嗣が好きだ。
それ以上の条件は、不要だった。
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