一話

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ザンザスが心を痛めているのは…――。 リリィの生い立ちの事だった。 リリィを弄んだ奴は消した。 だが…。 リリィの傷は消せないのだ。 身体に付いていた鞭の傷痕は、いずれ消えるだろう。 しかし…。 失ってしまった大切なものは、もう元通りにはならない…――。 リリィは、それを充分に判っているのだろう。 「俺が…守ってやりたかった。」 ザンザスの苦悩が、伝わって来る。 そっと、寝息を立てるリリィの髪を撫でれば、ん…、と小さな声を出して、安心仕切った寝顔を向けた。 さらさらと、金髪が顔に掛かる…。 ザンザスは、何時までも、リリィの寝顔を見つめていた…―― 「妹か…。不思議な気分にさせやがる。」 ザンザスにとって、初めての感情だった…。 『愛しさ。』
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