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男の足元には、粉々に裂かれた紙が散らばっていた。
『親愛なるテュラサの王よ。書面にて失礼するが、このままずるずると生温い関係を築く事は両国にとって望ましくないと、私はかねがね考えていた。互いに空に利を置く者同士、どちらが空に相応しいかはっきり決めようではないか』
さらさらと書かれていた達筆の主は、まさしく親交の深かったバイデンの王ガルゼトであった。
手紙を読むやいなや、男は手紙を持って来た外交大臣をすぐにバイデンへ遣わした。
『それが民を守り慈しむ王の発言か、馬鹿げた事を書いて来るな!』
と、ガルゼトへの伝言を頼んで。
男――いや、テュラサの王バロザは、やはり玉座に腰を据えたまま、噴火寸前の火山のようなオーラを散らしながら、遣いにやった外交大臣の帰りを待っていた。
外では豪雨と不気味な唸りをあげる風が踊り狂っている。
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