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雷鳴が五回ほど轟いたところで、外交大臣が戻って来た。
全身はまるでバケツどころか、巨大な酒樽をひっくり返したような豪雨に殴られた為にびしょ濡れであった。
それでも彼は王の前で無礼な態度を見せぬよう、ふらつく体をしっかり踏み止め、顔に張り付く金の髪を頭に撫で付けるように払う。
「……王様、バイデンより只今戻りま」
ずかずかずか……ばぁんっ!!!
外交大臣が王の間の大きな扉の前で城への帰還を報告しかけたところで、荒々しい足音と共に、大きな扉が乱暴に開かれる音が響いた。
廊下を連なる大理石の柱に一本ずつ設置してある、蝋燭の小さな炎がぐらりと大きく揺らぎ、音もまた廊下を伝わって消えていく。
外交大臣の目の前には、閻魔大王――もといテュラサ王バロザが、腕を組んで大きな岩のようにどーんと立っていた。
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