1人が本棚に入れています
本棚に追加
焦りと困惑に取り憑かれた少年は、カルヴェスが木製の簡素な棚から火傷に効く薬草や調合する為の道具を取り出し、手早く身支度を整える間も、とにかく母親を助けてくれとせがんでいた。
カルヴェスは道具や薬草が入った鞄を持ち、終いには泣きじゃくりだした少年をどうにか宥め、外へ出た。
「あんたの母さんはあたしが助けるから、もうビービー泣くんじゃないよ。で、家はどこなんだい?」
「コルバ村…っ」
「有難う。偉いね、坊や」
そう言って、カルヴェスは幾らか泣き止んだ少年を自分の後ろへ移動させた。
ぽつり、ぽつりと路地にも人影が見えてくる。
が、彼らはカルヴェスが口笛を吹く構えを取ったのを見て、路地の脇にピタリと身を寄せた。
「カルヴェスお姉ちゃん ?」
「コルバなら走るよりも、あたしの相棒に運んでもらうのが早いんだ」
彼女の澄んだ口笛が晴天の空に響く。
路地の脇に身を寄せた人々の頭上に、大きな白い鷲の影がするりと、たくましいはばたきと共に舞い降りた。
最初のコメントを投稿しよう!