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ぷるんとしたプリンを幸せそうに口に運んで、飲み込んだ後、万楼はじーっと日向子を見つめる。
「食べ物の好みが合う人って相性がすごくいいって聞いたことあるよ」
「まあ、そうですの? なんとなくわかるような気も致しますけれど」
「それじゃあボクの番。お姉さんの好きなタイプはどんな人? 優しい人? 真面目な人? 頭が良くて運動神経も良くて、しかもすっごくギターが巧い人とかいいと思わない?」
「伯爵様です」
「……やっぱりそうかぁ……」
何かを考え込むような顔付きでパフェを解体し始めた万楼。一方、日向子はあくまでマイペースに続ける。
「では、万楼様がheliodorに入ったきっかけをお聞きしても?」
万楼は大きな瞳をはっと見開いてきらきら輝かせながら半分を身を乗り出すようにして答えた。
「玄鳥だよ! 玄鳥がみんなにボクを紹介してくれたんだ。それに玄鳥はね……」
「おかしいですわね……」
「どうしたの? 日向子。珍しく難しい顔して」
デスクに戻って、ICレコーダーに録音した万楼へのインタビューの内容を聞き直していた日向子の顔は、確かに美々が言うように複雑な表情を描いていた。
「わたくし……今日は万楼様にインタビューさせて頂きましたのよ」
「うん。それで?」
「それなのにわたくし、何故か玄鳥様のことに詳しくなってしまいました」
「はあ? なんなの、それ」
美々は日向子からイヤホンを受け取って、録音内容を確認した。
半分も聞き終わらないうちに、美々の表情もまた日向子のそれと同じように転じていった。
「……いくらなんでも、これじゃあちょっと記事にはできないね」
「やはりそう思われますか……? わたくし、もう一度お話を伺ってみます」
「玄鳥のことは、ボクがちゃんとアピールしてきたからね」
「アピール??」
「うん」
練習スタジオに現れた万楼の、輝く満面の笑みを見ながら、玄鳥は嫌な予感が全身につき抜けるのを感じていた。
「お前、日向子さんに変なこと言ってないよな?」
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