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そしてそんなタイミングで、
「……兄貴、一体何したんだよ!!」
玄鳥が戻って来てしまった。
「別になんにもしてねェよ!」
「じゃあなんで日向子さんは泣いてるんだよ!」
「んなもん俺が知りてェよ……っ!」
日向子はハンカチで涙を拭いながら、言い合いする二人の前でぽつんと呟いた。
「……か、からいです……わ」
かくして日向子の味覚音痴容疑は完璧に晴れた。
日向子はただ、恐ろしく反応が鈍いだけだった。
「料理……?」
思いもよらなかった言葉に、万楼はいぶかしげに反芻した。
「はい、ご一緒にお料理をしながらインタビューをさせて頂こうと思うのですが、いかがでしょうか? 万楼様」
三日後に予定している再取材に際しての、日向子の出した提案は、当然のように先日の浅川兄弟との会食からヒントを得たものだった。
驚いていた万楼もやがて納得した様子で頷いた。
「うん、いいよ。なんだか楽しそうだね、二人で何をつくろうか? カスタードのミルクレープとか、巨峰のババロアなんてどう?」
日向子は首をゆっくり横にした。
「いいえ、今回はわたくし、万楼様とカレーライスを作ろうと思いますの」
「……カレーライス??」
「はい、カレーライスです。栄養たっぷり、具だくさんのカレーを作りましょう?」
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