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《第1章 人魚の足跡 -missing-【4】》
「……緋色のスパイス、はまんま過ぎるな……」
斜線を引く。
「……緋色の、シュガー」
訪れたばかりの夜に、呟きが吸い込まれる。
「……緋色のハニー、のほうがいいか……いや」
ノートに書き込んでは、書いた側からそれを線で潰す。
「……緋色の……ポイズン……? 悪くないか」
丸で囲む。
「……Bメロはこんな感じだな……」
いつものように無造作に垂らした真っ赤な長髪をかき上げて、一息ついた。
室温で温くなったコーラをあおる。
ちょうどその時、バイブに設定していた携帯電話が視界の端でブルブル振動しながら光始めた。
掴んで引き寄せると、一番最近登録したナンバーからの着信だった。
ひとまずコーラのボトルは置いて、通話ボタンを押す。
「……どうした? 日向子」
《紅朱様でいらっしゃいますか!? 大変ですの、万楼様が……万楼様が……!!》
予想もしない緊迫しきった声音に、紅朱は眉根を寄せた。
「落ち着け。万楼がどうした?」
日向子の上擦った声に耳を傾ける紅朱の顔は一瞬にして青ざめていった。
「……意識不明……!……?」
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