《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【1】

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「ではドラムを始められたきっかけは?」 「ノーコメント」 「……では、heliodorとの出会いは」 「ノーコメント」 「では有砂様の……」 「……ちょろちょろついてこんどいて。鬱陶しいやっちゃ……」 「おい有砂、そいつには一応協力してやれって言っただろうが」  紅朱に睨まれても、有砂は漂々としたものだった。 「答えたくないことは無理に答えんでええ、ってコイツが最初にゆーたんやで」 「そうは言っても、全部が全部ノーコメントで記事になるわけねェだろ?」 「いいんです、紅朱様。きっとわたくしの用意した質問がつまらないからいけないのですわ」  日向子はパラパラと質問メモをめくって、有砂に答えてもらえそうな質問を探す。  有砂はそれを一瞥すると、 「……ほな、お先」  あっさりと背中を向けた。 「あ、待って……待って下さい……!!」  万楼の取材に思ったより時間がかかり、原稿の締め切りまで余裕のなくなりつつある日向子は、慌てて有砂を追い掛けた。  慌てたところで元来挙動がスローモーな日向子が、圧倒的にコンパスの大きさが違う有砂に追い付くのは実に大変なことだったが。 「有砂様!!」  駐車場まで追い掛けて、有砂の車(白のセダンである)の側まで来てようやく追い付いた。 「……しつこいねん、ジブン」  うんざりした様子でキーレスリモコンを握る有砂に、日向子は必死で訴えた。 「あの……お急ぎでしたら今日は終わりで構いません。次の取材予約を……」 「……都合、つかへんな」  日向子は更に何か言おうとしたが、それは叶わなかった。  思いもかけない邪魔が入ったからだった。 「heliodorの有砂か?」  すぐさし向かいに駐車されていたライトバンの陰から、ぞろぞろと出てきた集団。  派手な髪色や服装から見ても、恐らくは有砂と同業者と思われる男たちが総勢四名。 「……ん?」  有砂はだるそうに返事した。 「てめえか、うちのメンバーの女に手え出しやがったのは」  四人のうちの一人、紫のソフトモヒカンが言うと、 「……へえ、そうなん?」  有砂は顔色一つ変えずに淡々とした口調で返し、更に一言つけ足した。 「……どのオンナ?」
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