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「なっ、てめふざけんなっ!!」
「なめてんじゃねえぞ、こら!!」
背中に火をかけられたかのような勢いで四人は一斉に有砂に向かってくる。
有砂は舌打ちすると、状況が掴めずにぼーっとしていた日向子の腕を掴んだ。
「きゃっ」
無言のまま、いささか乱暴にその腕を後方に押しやる。
日向子は短い悲鳴を上げて、よろけながら斜め後方2メートルまで下がり、最後にはぺたんとおしりから転んだ。
「……有砂様……?」
「……帰りや、お嬢」
見る間に囲まれた有砂は、体格こそ誰よりも勝るものの、どう考えても四人を相手に勝ち目があるとは思えない……というより、戦うつもりもあまりないようだった。
背後と両脇から押さえられても抵抗する様子もなく、相変わらず冷めきった眼差しで興奮する相手を見下ろしている。
そんな態度はいよいよ相手をいきり立たせる。
「この下衆野郎がッ!!」
紫モヒの拳が思いきり有砂の腹部にめりこむ。
「……っくっ……」
流石に低くうめいて、苦悶の表情を浮かべる有砂。
そこへ更にまた一発、怒りに満ちた拳が叩きつけられる。
「……っ……」
凄まじい光景に座り込んだまま動けずにいた日向子だったが、その瞬間にようやく我に返った。
「有砂様が……」
なんとかしなければ、と思った日向子はバッグから携帯を引っ張り出した。
この窮地において、日向子がとっさに選んだのは……。
「……玄鳥様ッ! 玄鳥様助けて下さい……有砂様が!!」
「……とゆーカンジで、玄鳥に救援要請があって、おれたちみんなで駆け付けたってワケ」
蝉はもう一度深く溜め息をついた。
「玄鳥が連中追っ払って、おれがバイク置いて、車運転して連れて帰ってやったのよ?
マジで部屋まで運ぶの超しんどかったしー。カラダばっかデカくなっちゃって手がかかるんだから、この子は……」
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