《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【2】

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《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【2】

「……譲歩したる、ゆーことや」 「譲歩……」  日向子は小さく反芻した。 「オレが提示する3つの条件を守れるんやったら……少しは協力したってもええ」 「まあ、本当ですの!? 有砂様」  ぱあっと表情を明るくする日向子に対し、有砂はあくまで冷たく淡々としている。 「……条件1、オレの邪魔をしない」  日向子は聞きもらすまいと真剣な顔で頷く。 「条件2、オレに干渉しない」  日向子は一々首を縦にする。 「条件3、これで一昨日の件はチャラや……ええな?」 「え??」 「……わかったか?」 「は、はい。お約束致します」  と元気良く返事する。 「わかったら……ついて来てもええ」  有砂は踵を返して歩き出した。  日向子もそれを慌てて追いながら、 「有砂様」  と背中に呼び掛けた。  返事はなかったが続ける。 「一昨日のことですけれど」  有砂は立ち止まって、不機嫌さを露にしながら振り返る。 「……人の話、聞いてへんのか?」 「申し訳ありません、でも一つだけどうしてもお伝えしなければならないことがありますの」 「……なんや?」  心底面倒臭そうに、溜め息混じりに問う有砂。  日向子は微笑して、それから深く深くお辞儀した。 「あの時は、かばって下さってありがとうございました」 「……は?」  それは有砂の予想の範疇にない言葉だった。 「有砂様はわたくしのことを逃がそうとして下さいましたでしょう? そのお礼だけはどうしても申し上げたくて……」 「……ジブン、アタマ悪いやろ」  有砂は呆れきったような顔で日向子を斜め上から見下ろす。 「……そんな調子やと、いつか怖い目に遭うで」  まるで嘲るような酷薄な笑みを浮かべて。
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