《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【2】

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 携帯の終話ボタンを手探りで押した紫色の爪先が、再び目の前に開かれた胸元に触れる。 「……やっぱり、わざとやったんですね……携帯」 「ふふ……意地悪だったかしらね」 「……そうですね」 「……だって頭にくるでしょ? 何にも知らない小娘がこのわたしに反論しようなんて、生意気だわ」  黙ったままの有砂の背中に、細く、しなやかな両腕が回される。 「……あんな、頭の弱そうなお子様は、あなたにはふさわしくない……そうよね? 佳人……」 「……珍しいこともあるもんだ」  ミラー越しに、こちらへ向かってくる日向子の姿を確認して、蝉は車を降りた。 「お嬢様が自分から迎えに来て~、なんて……どういう風の吹き回しかな」  胸ポケットの眼鏡をかけて、「雪乃モード」を「オン」にする。 「お迎えに上がりました。お嬢様」  うつ向き気味に歩いていた日向子は、ゆっくり顔を上げた。 「雪乃……」 「……お嬢様? いかがなさ……」  揺れる瞳から、雫が滑り落ちる。 「……雪乃……!」  そのまま日向子は、雪乃の胸に飛び込んできた。 「……お嬢、様……?」 「ごめんなさい……っ、今だけ……少しだけ……」  雪乃は、わけも話さず泣き続ける日向子に身体を明け渡したまま、立ち尽くしていた。 《つづく》
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