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下は黒のスウェットを履いてくれていたのが救いだったが、それでも男性の裸に免疫のない日向子には、十分過ぎるほど強烈なビジュアルだった。
「……わざわざこんな真夜中にノゾキに来たんか? お嬢」
冷ややかな言葉が背中に突き刺さる。
「わたくし……有砂様とお話がしたくて参りましたの」
「話……?」
「昼間は取材を放り出して途中で帰ってしまって、申し訳ありませんでした……仮にもプロとして仕事する人間にあるまじきことと反省致しました」
「別に、反省するようなことでもないんちゃうか。普通、あんな場面に出くわしたら逃げたくもなるやろうからな」
あんな場面、という言葉にその「あんな場面」が頭をよぎり、日向子は一瞬どきっとしで、それを必死に振り切ろうと深呼吸する。
「それでも、わたくしは逃げるべきではありませんでしたわ」
有砂はそれを鼻で笑う。
「ホンマは軽蔑したんやないんか? ……オレがどういう男か思い知ったやろう」
日向子は後ろを向いたままで、首を左右した。
「確かに、本心を言えばとてもショックでしたわ……ですが、わたくしは有砂様を軽蔑したりはしておりません。
……有砂様のことをもっと理解したいと思っています。
何故なら有砂様は……きっと本当は純粋で温かい心を持った方だから」
バサッと音を立てて、湿ったバスタオルが床に落ちた。
「……何を言うかと思えば。ホンマにアタマの悪い女やな」
「っきゃっ……っ」
大きな手が後ろから日向子の口を塞いだ。
「そんなにオレのことが知りたいんやったら、教えたる……」
そのまま有砂は半ば無理矢理、軽々と日向子を抱き上げた。
「……っ……んっ」
声を発することも、有砂の腕から逃れることもままならず、触れ合う肌から直接伝わる体温に日向子はうろたえるしかなかった。
そうするうちに日向子は、いともたやすく寝室に運ばれ、乱暴にベッドに投げ込まれた。
「……っ……あり……ささま……っ」
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