《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【4】

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 日向子もまた、解放された身体を起こし、ベッドの上に品良く正座で座った。 「有砂様、ご自分の手でご自身を貶めるような真似はおやめ下さい」 「……なんや、今度は説教か」  頬を押さえて視線を明後日の方向に逃がしている有砂。 「いいからちゃんとこちらを見て、わたくしの話を聞いて下さい」  日向子の有無を言わさぬ強い口調に、有砂は微かに怯んでいるように見えた。  いつの間にか形勢は逆転していた。 「有砂様にはご自分を労る義務がありますわ」 「なんや……義務って」 「何故なら、そんな有砂様を大切に思う人がたくさんいるからです。 蝉様たちheliodorのメンバーの皆様、ファンの皆様、それにわたくしとて……有砂様が傷つくことを望みません。心の傷でも、身体の傷でも。 そしてわたくしたちはあなた様を傷付ける者を断じて許しません。それが、有砂様ご自身だったとしてもですわ」  無言のまま、まだ頬を押さえている有砂に、日向子はにっこりと微笑む。 「……乱暴なことを致しまして、申し訳ありませんでした」  有砂は目を半眼して、溜め息をついた。 「……それをお嬢が言うのは何か逆な気がする……」 「まあ……そういえば、そうですわね」  何か感心したように頷く日向子を見やりながら、有砂は額に手を押し当てた。 「……かなんわ……」 「はい……?」 「……ホンマのアホには勝たれへん」  有砂は、まるで身体の奥に蓄積されたものを全て吐き出すかのように、更に深く深く息をついて、そして、苦笑を浮かべた。 「……悪かった。オレの負けや」  有砂は、なんだかきょとんとしている日向子に、手で「もっと端に寄れ」と合図した。  日向子は素直にセミダブルのベッドの上を壁側に滑るように移動した。  日向子が移動し終わると、有砂はおもむろに、空いたスペースに身体を横たえた。 「……なんや疲れたわ……」  うつ伏せになってボソリと呟く有砂を、正座した姿勢のまま、日向子は見つめた。
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