《第2章 悪夢が眠るまで -solitude-》【4】

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 そして、何故かそっと伏している有砂の、まだ半乾きの髪を、撫でた。 「……何しとん」 「いえ、なんとなく」 「……意味わからん。なんや、眠気がくる……」 「では、おやすみ下さい」 「……なあ」 「はい」 「……蝉からどこまで聞いた?」 「……」 「……まあ、ええわ。あの件をバラしよったゆーだけで十分や……あいつ、極刑やな……」  表情の読めない姿勢で、なかなか不穏当なことを口走る有砂に、蝉のこれからを少し心配しながら、日向子もようやく一息ついた。  安堵した途端、思わずこみ上げてきた欠伸を押さえきれず、日向子は、目をこすった……。 「あ……あ……あぁぁぁぁっ!!!」  まるで断末魔のような恐ろしい悲鳴という、効果覿面な目覚ましアラームで、日向子はぱちっと目を開けた。 「……あら? わたくし、いつの間に」  ゆっくりベッドから身体を起こすと、寝室の入り口に見知った顔を見つけた。 「まあ……蝉様、おはようございます……」 「お……お……おはよう、じゃないからっ!!」 「はい?」 「何この状況!?」  蝉はしゃがみこんでオレンジの頭を抱え込み、ふるふる震える。 「なんでよっちんのベッドで二人で寝てんの!? ……しかもよっちんってば半裸だしぃ!? ……うそだぁぁぁ……」 「あの蝉様、まだ有砂様、眠っていらっしゃいますので。お静かに」  常識然とした日向子の注意に、蝉はぴたっと黙った。  それから小声に改めて再び口を開いた。 「こんな騒いでも起きないか……眠りの浅いよっちんには珍しいかも」  二人は、ベッドに横向きに身体を投げ出して、無防備な寝顔を晒している有砂を覗き込んだ。  規則正しい寝息から、有砂が安らかな眠りの中にあることは明らかだった。 「……日向子ちゃんの隣だと安心できんのかな」 「え……?」 「……そ、それともそんなに疲れて、ぐっすり寝ちゃうほどすごいことしちゃったの? キミたち」  再びふるふる震える蝉を不思議そうに見つめながら、若干寝惚けた口調で日向子は言った。 「ちょっと痛かったし、ちょっと怖かったですけど……やっぱり有砂様は優しかったです」  そうして、近所迷惑な悲鳴が再び辺りに響き渡ったのだった。 《つづく》
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