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「大丈夫…?」
思わず口から出たのは
何の気遣いもないそんな在り来たりな言葉。
「………」
少女は何も答えない。
そりゃあそうだ。
見知らぬ男、(つまりは僕)に声をかけられたのだから。
ましてや、こんな幼い子が
警戒をしないはずがない。
ニコリと笑いながら
少しだけ歩み寄る。
「君は…」
こんな時間に何をしてるの?
そう言おうと思ったが、
口が止まった。
「―――…寂しいの」
少女が今にも泣きそうな声でそう言ったから。
「そっか…」
僕はそれだけ言うと頭を撫でた。
少女があまりに無表情で
瞳の奥に悲しみが映っているようだったから。
泣かないでね、
と優しさを込めながら。
普段はこんなことが出来る程、
優しい人間なんかじゃない僕。
でも、それでもなぜか…
安心させてあげたかったんだ。
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