我が輩は黒猫である

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黒田 「いや~ゴメンゴメン。じゃ達屋君、あんまり怒るとその可愛い顔も台無しになってしまうよ」 達屋 「余計なお世話です!」 そこへ事務所の入り口のドアノブが回される音が響いた。三人が一斉に顔を扉に向ける。ドアが開かれると1人の男がジェラルミンケースを持って中に入って来た。 男 「あの~ここ探偵事務所ですよね~?」 男は黒田の容姿を見て少し不安げにそう呟く。黒田が探偵らしからぬ服装をしていたからであろう。 達屋 「そうですけど・・・依頼ですか?」 達屋がデスクの上に身を乗り上げてる黒田を追い払うように手を横に振ると黒田はデスクからすぐさま飛び降りその男の元へ駆け寄っていった。そして、中世のお辞儀の様な格好で出迎えるとこう言った。 黒田 「私がこの探偵事務所の探偵 黒田虎吉であります」 男 「そっそうですか・・・依頼したい事があるんですけど・・・」 見た目、気の弱そうな真面目な普通のサラリーマン風の男である。 黒田 「さっさぁ、奥でお話を聞きましょうか どうぞどうぞ」 黒田は手で客人を奥へ誘導するのと同時に竜胆へ目でお茶を出すように指示する 。竜胆はそれを認識すると相槌を打ってシンクの方へ向かった。 黒田達が奥の応接間に行く途中ジジがそれを遮るかのように前を横切った。 男 「あ・・・あの猫は?・・・」 黒田 「ああ気になさらないで下さい。うちのアシスタントでして」 男 「あ・・・アシスタントって・・・」 気の弱そうな男は強引に黒田にそのまま奥へ連れて行かれる 。 応接間に向かい合わせに座る二人。応接間は事務にガラス版を置いて区切られた簡易な物だ。 黒田 「で・・・依頼とは?」 黒田が前に乗り出し急かすように聞く。 男 「あっ・・・すいません私こう言う者でして」 彼は懐から名刺を取り出そうとしてふと思い付いたように手を止めた。 男 「職業とかは・・・言わない方がいいですかね?」 黒田 「言ってもらっても構いません。私達は秘密は守る主義でして、ましてやお客様の個人情報など持っての他。他言は致しません」 男 「そうですか、それを聞いて安心致しました。ではこれを…」 男はスッと懐から名刺を取り出すとそれを黒田に手渡した。黒田はそれを受け取りさっと目を通す。 男の名前は間々下健一、某銀行に勤めるエリートサラリーマンである。
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