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そうこうしている内に、森の出口にたどり着く。
すると、朝霧さんが私を優しく地面におろしてくれた。
「……もう安全そうだね。舞さん、さっきはいきなり担いでごめんね」
「いえ。あの、先程はありがとうございま……」
お礼を言い終わらない内に杉浦さんが私の腕をグイッとつかんできた。
「おいっ! ……本当に無事なんだろうな!?」
私を心配してくれているにも関わらず、杉浦さんの顔が半端なく怖い。
隣にいる金田さんまでもが、何事かと目をパチクリさせていた。
それに更に言うと、掴まれている腕も……少し痛かったりする。
もしや私が朝霧さんに担がれていたからだろうか?
杉浦さんの気持ちを知ってしまった以上、そう思わずにはいられない。
「あの、大丈夫です……杉浦さん」
――実際、杉浦さんみたいな人が私なんかに好意を抱いてくれていること自体が未だに信じられないくらいだ。
杉浦さんはいずれ社長になる人。
そんな人が私に?
一時の気の迷いなんじゃないだろうか……。
そう思えてならなかった。
杉浦さんは私から手を離し、大きく息を吐く。
「……そ、そうか。無事なら良いんだ。……無事なら、な」
そして杉浦さんは、今度は朝霧さんの方を見た。
「朝霧、ところであの事は舞に話したのか?」
朝霧さんは首を横に振る。
「いえ……まだです。正直言うべきなのか悩んでいます」
「そうか。だが、敵の名前でいずれはバレる事だ。戦闘中に取り乱されても危険だしな。……だから舞には俺から話す」
敵の名前でバレる?
私に関係すること?
えっ……それってもしかして……。
ものすごく嫌な予感がした。
だって先程の敵の数が二体だったから。
その数が意味するもの。
それは一つしかない。
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