1 冴、気にすんな

2/7
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
気がついたら、部屋の中にいた。 狭いワンルーム。フローリングの中央にガラステーブル。オレンジのカーテンに、子供っぽい学習机。 知っている、ってかさっきまでいた部屋だ。 ベッドは乱れたまま、かろうじてシーツで隠れている。 まったく。テレビ点けっ放しでどこへ行ったんだ。 脱いだ服はそのまま。床にはお菓子の食べカスがこぼれている。 俺はため息をついた。 冴のやつ。俺が帰ったら、いつもこうなのか? 園宮冴。女だ。 おっちょこちょいのド天然。しかもバカ。 まあ、いいところはたくさんあるけど、最近は欠点ばかり目立ち始めた。 この惨状をどうしようかと突っ立っていると、後ろのドアが開いた。 「うわ、びっくりした。どうしたの、律?」 振り向くと、バスタオル一枚巻いた格好で、冴が入って来た。 どうしたと聞かれても、答えられない。 たしか冴の家を出たはずだ。外階段を下りた記憶もある。 けどその後は… 暗く、深い闇に吸い込まれたように記憶がない。 「戻って来るなんて、ヘンなの」 「ああ。たしか帰ったはずなのに…」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!