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 年間、交通事故で六千人以上が死んでいる。    そう。六千人も死んでいるのだ。    宝くじで一等を当てるより、交差点で血飛沫を上げるほうがずっと確率は高い。    数字だけ見れば、実の娘が車に轢かれて重傷・・・・・・などということも、そんなに珍しいことじゃないのだ。    妻から電話を受けた僕は、取り掛かっていた仕事を同僚に頼み、急いで病院に向かった。    知らせを聞いて、一秒間……いや五秒間くらいは意識が止まっていたかもしれない。    頭の中を走馬灯が駆けずり回り、最後には今朝話したときの娘の笑顔だけが残った。      会社の前でタクシーを拾い、近くの市民病院まで飛んでもらった。    途中、救急車が目の前を横切り、心臓がドクッと脈打った。    車内でも落ち着けなくて、ネクタイを緩めたり、締めたりを繰り返していた。    十一月に入り、めっきり寒くなったというのに、冷や汗が頬を伝う。    無事でいてくれと両手を合わせて只管に祈っていた。        病院に着くと、運転手に万札を放り投げ、駆け足で院内へ向かった。    途中、自転車に乗る学生とぶつかりそうになったが、かまっちゃいられなかった。  今は、娘が先だ。
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