災厄の到来

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途端に返す言葉をなくした剣悟は閉口したが、その代わりに、いつの間にか教室に入ってきた宮原がだったらと口を挟んだのだ。 『そのお花、私にくれる?』 解かれた髪と同じ柔らかな口調で、宮原は手を差し伸べた。自分が持っていても仕方なかったので、夕斗は猫かぶり、と心中でぼやきつつも花を彼女に渡したのだ。 宮原はそれを大事にすると言って受け取ったが、夕斗は彼女の性格からしててっきり、とっとと捨ててしまうものとばかり思っていた。それが、まだ持っていたなんて。 ―――――― 仮眠を取った高城は、しばし本庁を抜け出していた。 行き先は病院。平良(たいら)に相談したいことがあったので、今度は軽い手土産持参で出直してきた。近くで買った大福の詰め合わせを平良に渡して、高城は椅子に腰を落ち着ける。 ここは個室なので、音量に気をつければ話を誰に聞き止められることもない。
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