転校生と幽霊トンネル

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どれだけ長い間、このトンネルは霊を喰い続けていたのか。 尽きる体力と尽きぬ霊。 夕斗は荒い息を継いだ。 力が足りない。 今でも凡人よりは力があるつもりだが、宮原には敵わない。 「先生…」 己の無力を痛感して呟いた瞬間、彼に迫っていた生白い手が止まる。 そしてその次には、けたたましい車のクラクションが鳴り響いた。 その音がトンネル内に反響して、霊の悲鳴と交わる。 ライトに照らされた夕斗は、一瞬目がくらんで動けなかった。 しかし轢(ひ)かれるのではないかと思うほど目の前に止まった赤い車が、誰のものかはわかっていた。宮原だ。 「乗れ!」 短くひと言、運転席の窓から鋭い女の叫び声。
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