3265人が本棚に入れています
本棚に追加
/2509ページ
車はトンネルのど真ん中で急停車する。
「わあっ…ぐっ」
シートベルト不着用のためふっ飛ばされかけた夕斗を、宮原の手が無造作に押さえつけた。
ちなみに後ろの剣悟と比古は前のシートに激突。
美玲と渚は彼らの足元に転がった。
それでも起きないところを見ると、ある意味彼女たちはツワモノである。
「私が片付けるまで出るなよ」
そう言い残して、宮原は車の外に出た。
目の前に広がる闇を恐れず、そこに漂う霊すらも恐れず、彼女は上を見上げる。
そこに、最初の霊がいるのだ。
このトンネルを魔界へと変えた、ずぶ濡れの女の霊が。
ゾクリと、夕斗の背を悪寒が駆け上がった。
夏に死んだのだろうか。
長い黒髪の、ひらひらした赤いワンピースを着た女が宙に浮いている。
最初のコメントを投稿しよう!