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「腹に子を宿したまま男に捨てられたか。憐(あわ)れだな」
ドクンと、夕斗の中で鼓動が鳴り響いた。
トンネルに来て最初に退じた、水子の霊。
現世に生まれる前に死んだあの赤子の霊は、まさか。
「最終的にはこのトンネルでわざとトラックに轢かれ自殺…といったところか」
呟くように言い終えると、宮原はパチンと指を鳴らした。
それに答えるかのように、闇と一体だったひとつの陰が盛り上がる。
宮原の隣に現れたそれは、大型犬よりも一回り大きな黒い犬だ。
彼女の使い魔、煉夜(れんや)。
「行け」
短い命令に従い矢のように飛び出した陰は跳躍し、滞空している女の首に喰らいつく。
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