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そう思ってから、夕斗は何度目かのため息をつく。
大嫌いだったはずなのに。
無邪気な子どもが。
何も知らずに屈託なく笑う、剣悟が。
明るくて、無駄に元気で、剣悟は滅多やたらに無垢だった。
それがとても欝陶しくて憎くて仕方なかったのに。
毎朝毎朝、何度素っ気なく返しても「おはよー」と元気にあいさつしてくる剣悟に、夕斗はいつしか負けていた。
嫌いだと思う感情は、いつしか別な感情に塗り潰されて。
あんなに大嫌いだった「学校」という場所も、好きになれた。
それはいじめがなくなったからではなくて、陽気なクラスメートがいたからだ。
夕斗はやっとそれに気付いた。
けれどもう、駄目だろう。
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