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「百花!あんた今度受験でしょ。どこ受けんのよ」
とある家のリビングにハスキーな女の声が響く。真夜中というには少々早い時間だが、十分に夜が更けているそんな時間帯。よく通る声でリビングにいるもう一人の男に話しかけていた。
「んーまだ詳しく決めてないけどやっぱ共学のとこかな。本当は女子校がよかったんだけど、なんでか先生が受けさしてくれなくて」
男の方は心底残念な様子で女に返す。本当に可哀想なのは、真剣な顔をして女子校を受けたいと相談された先生のほうだが。
女はそんな男の返事を聞き、前に乗り出すようにして一つの提案を男にする。
「じゃあさ私んとこ来てみ、」
その瞬間近づいてきた女と同じように反対側に距離を取った男が、聞きたくもないというように女のセリフに被せる。
「いやだ、NO、断固拒否する。姉貴についてっていいことがあった試しがない。あの時だってクリスタル採取だっていっただけなのにわざわざ原石とりにクリスタルドラゴン倒しにいくし、温泉行こうとか言ってジャングルの奥地まで天然温泉探しに行こうとするし、あの時だって…………」
なにやら、トラウマのスイッチが入ったような男に対し、女が一言。
「あなたの夢を叶えるチャンスかもしれないのよ」
「詳しく聞かせろ」
実に変わり身の早い男だった。
「ん、聞き分けのいい子は好きよ」
「冗談。姉貴に好かれたら1ヶ月もつかもたないかわからないって痛っちょっまな板はそうやって使うものじゃないから」
ゴッ、ゴッ、ゴッ、と何か固いもので殴打するような音が響く。
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