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部長曰く、この法務知財部にも新入社員が入るとのこと。現在は集団研修中であり、配属は7月。今が6月半ばなので、あと2週間ほどの話だ。 と、あれば。 「誰か、教育担当を決めないといけない。」 やはり、そう続く。 ごま塩頭を指の太い手でポリポリかきながら、それでも眼光は鋭く、部員に問い掛ける。 この油断のなさ。 まさに法務知財部、通称、法知の部長といったところ。 法知部員の面々は、複雑な顔つき。 新しい人が入るのは嬉しい。けど、普段の仕事を抱えつつ、教育担当もこなすのは、やっぱりちょっとツライ。 私もそう思ってしまった。 「まぁ、それぞれが抱えている案件もあるし、いきなりの話だったからな。ちょっと考えてみて、興味がある人は、後で教えて下さい。」 そして部員からネガティブな雰囲気が本格的に出てくる前に、ちょっと猶予をくれて、話を切り上げる。最初から待つ気だったのかもしれないのに、あくまでそれを部員への気遣いと感じさせるような、柔らかな言い口で。 そのあたりもやはり、法知の部長。
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