紅蓮12

17/63
前へ
/645ページ
次へ
――――――…。 そよそよ…。と、心地いい風が俺の髪を撫でていく 音は無く、また色も無く、今感じるのは風と綺麗な空気だけ…。 そう感じるのは、俺が瞳を綴じているせいか…。 または、本当に無いのかもしれない…。 ふわふわ、ゆらゆら、と体が宙に浮いている感覚でまるで、宛ても無くただ自由に漂っているだけみたいな感覚…。 そして、聞こえた懐かしい蝉の声と花の香り じっ…、としていれば 懐かしい人の声―――――。 ―――陽斗 ―――陽斗ってば‥。 ―――起きて‥。 ――――はると… その声に吊られて ゆっくりと綴じていた瞳を開ければ――― 『ゥワァアンッッ!!』 「うわぁっ!!」 真っ白な犬が、俺の目の前にいた 吠えられて、咄嗟に起き上がって声を出す 『―――……』 犬を目の前にして 周りを見渡せば、さっきとは違って真っ白い空間ではなく、空もあるし緑もある そして、見覚えのある風景――――。 「…ここ」 目の前の犬を見ると 何だか見覚えがあった犬だった…。 「………クゥー?」 そっ…。と確かめる様に、真っ白い犬に呼び掛ければ 目の前にいる犬は 俺の眼を見ながら「クゥー」と鳴いた 、
/645ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4560人が本棚に入れています
本棚に追加