紅蓮12

23/63
前へ
/645ページ
次へ
誰も居なかった…。 確かに声はしたのに 周りを見ても誰もいなかった だけど…。 人はいないけど、声はした ―――陽斗 ―――陽斗…。 優しくて、凄く暖かい穏やかな声色 旭の声―― 透き通ってて、綺麗で、良く響く声 愛情の篭った声 旭の声が大好きだ 此処にいるからか 旭の懐かしい声が、自然と頭の中で繰り返される 「……旭」 ポツリ、と呟いても 俺しかいない部屋には 只、虚しくこだまして消えていくだけ…。 なんで、俺は今此処にいるんだろう…。 そんな事を思った 白い世界にいた時の幼い俺は、まるで 何かの記憶を思い出して欲しいと言ってるみたいだった その推測があっていれば、今いるこの日が何か特別な日で 今の俺に思い出して欲しい記憶なんだと思う 俺の中で欠けている記憶 ふと…。壁に掛かっている英語版のカレンダーを見る 幼い頃の俺はあまり、日付間隔が曖昧だったのでご丁寧に過ぎた日付に斜線が引いてある その斜線を一つ一つ眼で辿ってく …5…10…12…―――。 そして、斜線を辿って俺の眼が止まった場所は 「―――嘘だろ」 信じられなかった けど、俺の馬鹿げた推測が確実に合っている事が証明した 幼い俺が思い出して欲しくて 今の俺が思い出したくもない ―――――記憶 8月20日 、
/645ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4560人が本棚に入れています
本棚に追加