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その名前を言った瞬間、俺を蹴り飛ばす奴の動きが止まった
俯せの状態から仰向けになれば、見上げた先には哀しい顔。俺を睨む瞳にはしっかりと暗い憎悪が宿っているのに、その表情は哀しげで辛そうだった
「……なに、言ってんの。恭?誰それ」
見上げた人間は困惑したように、笑っていた。まるで自分を否定するように愉しげに笑っていて、泣いていた
「じゃあ…。こう言えば、よかった?」
「―――俺の母親を殺した奴の子供。成瀬 恭」
「――っ!」
俺を蹴り飛ばす奴を真下から睨む。そして俺を見下ろす奴と眼がカチ合い、相手が息を飲む。困惑した表情から動揺した表情へと変わった顔。その顔に俺は確かな確信を持った
「…恭。お前なんだろ」
「違う」
「背格好も、体格も、その殺気も学園で見て感じたものだ」
「違う。違う」
「それにお前の今までの行動からして、髑髏が現れた時と一致がいく」
「違う。ちがう。チガウ」
俺も信じたくはなかった。だけど学園の恭と仮の姿をした恭は同じで、恭の行動と髑髏の行動は一致するもので
なによりも…。
俺が夢で見たあの日。あの日に恭はいたんだ
、
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