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―――あ、やば…。
そう思うと同時に冷静に状況を見ている自分がいた。本当にスローモーションのようで、自分の意識がそこにない感覚
危険だと判っているのに逃げられないのは人間の性質だろう。俺はただ銀色をした棒が俺目掛けて降ってくるのを見ていた
きっと逃げられないと確信していた。逃げようとしたところで、俺の体は殆ど動かない。血だらけで、骨だって何本かいっている。逃げても鉄パイプは俺の体のどこかには必ず当たる
―――当たる
もう駄目だと思いせめてもと瞼を降ろす。そして瞼を降ろす時に見たのは、先程となんら変わらない表情をした髑髏の顔。まるで期待外れな物を見たような顔だった
――――ヒュッ
頭上で空を斬る音がした。固く眼を綴じて、次にくる衝撃に備えた
「おらああぁッ!!」
「陽斗っ!」
――――ガァアンッッ
錆びれた港の倉庫に不釣り合いな音が響いた。その音は倉庫の側面を反響板にして響き渡り、徐々に消えていく。修の声が一瞬聞こえ、眼を見開いた修が想像出来た。鉄パイプを振り下ろした男は確実な手応えを感じて、ニヤリと笑う
だけど、その表情は一瞬にして驚愕へと変わった
「悪いな。コイツに手を出していいのは」
「俺だけなんでな」
俺目掛けて鉄パイプが振り下ろされる瞬間、俺の好きな匂いがした。次に逞しくて優しいなにかに包まれ、俺に当たる筈だった棒はなにかの力で止められた
漆黒の獣によって
、
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