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――教室内に授業終了のチャイムが鳴る。
先生の長い講義に聞き疲れた生徒達は次々と教室を出て行く。
そんな中、一人の青春真っ盛りの少女が私の席まで駆けて来た。
「かーえろっ!ミーゼルっ!」
彼女は学生鞄を私の席にドンッと置くと、ここは全寮制なのだというのに、まるで家に帰るかのように言う。
「もう、あんまり乱暴に使うと壊れちゃうよ?シーノ…」
ふと、彼女…シーノの鞄と自分の鞄を見比べて見る。
いくら私が最近転校して来たからと言っても、明らかにシーノの鞄はみすぼらしい姿になっているのは一目瞭然だ。
…もっと物を大切にして欲しい。
「そんな事より、早く夕飯買いに行こうよ!
購買の菓子パン無くなっちゃう!!」
私に慌てたように言った後、勝手に教室から出て行ってしまった。
今日も元気だなぁ…と遠目に見ながら歩いて追ったが、途中で手招きをされ、仕方なく走る。
あーあ、先生にバレたらどうしよ。絶対怒られる。
私は一人嘆息しながらシーノに追いつくまで走り続けた。
運良く教員に出くわさずに購買に着くと、私の目には見たくもない光景が映った。
私より先に行っていたシーノと、一人の男子生徒が一つの菓子パンの為に口喧嘩になっていたのだ。
「あんたなんかプリントでも食べてれば良いんだ!」
「俺は山羊じゃねぇ!」
「全く器が小さいなぁ、だからチビなのよ、チビウォン!」
「なんだと!?この、オカルト女!!」
できれば他人でいたかったが、男子生徒――ウォンは私の友達であり、クラスメイトな為、そういう訳にもいかなかった。
「二人とも、落ち着いて!」
このままでは魔法で校舎を壊しかねない二人の間に割って入ると、なぜだかキョトンとした顔をされてしまう。
そんな顔されても……
逆にどうしたらいいか分からなくなっちゃったじゃない。
暫くの沈黙の後、ウォンはつまらなさそうに寮へと帰っていった。
私の隣では菓子パンを袋に詰めてもらって、嬉しそうに微笑むシーノが。
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