第一話 全ての始まり

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――教室内に授業終了のチャイムが鳴る。 先生の長い講義に聞き疲れた生徒達は次々と教室を出て行く。 そんな中、一人の青春真っ盛りの少女が私の席まで駆けて来た。 「かーえろっ!ミーゼルっ!」 彼女は学生鞄を私の席にドンッと置くと、ここは全寮制なのだというのに、まるで家に帰るかのように言う。 「もう、あんまり乱暴に使うと壊れちゃうよ?シーノ…」 ふと、彼女…シーノの鞄と自分の鞄を見比べて見る。 いくら私が最近転校して来たからと言っても、明らかにシーノの鞄はみすぼらしい姿になっているのは一目瞭然だ。 …もっと物を大切にして欲しい。 「そんな事より、早く夕飯買いに行こうよ! 購買の菓子パン無くなっちゃう!!」 私に慌てたように言った後、勝手に教室から出て行ってしまった。 今日も元気だなぁ…と遠目に見ながら歩いて追ったが、途中で手招きをされ、仕方なく走る。 あーあ、先生にバレたらどうしよ。絶対怒られる。 私は一人嘆息しながらシーノに追いつくまで走り続けた。 運良く教員に出くわさずに購買に着くと、私の目には見たくもない光景が映った。 私より先に行っていたシーノと、一人の男子生徒が一つの菓子パンの為に口喧嘩になっていたのだ。 「あんたなんかプリントでも食べてれば良いんだ!」 「俺は山羊じゃねぇ!」 「全く器が小さいなぁ、だからチビなのよ、チビウォン!」 「なんだと!?この、オカルト女!!」 できれば他人でいたかったが、男子生徒――ウォンは私の友達であり、クラスメイトな為、そういう訳にもいかなかった。 「二人とも、落ち着いて!」 このままでは魔法で校舎を壊しかねない二人の間に割って入ると、なぜだかキョトンとした顔をされてしまう。 そんな顔されても…… 逆にどうしたらいいか分からなくなっちゃったじゃない。 暫くの沈黙の後、ウォンはつまらなさそうに寮へと帰っていった。 私の隣では菓子パンを袋に詰めてもらって、嬉しそうに微笑むシーノが。
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