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適当に返事をしながら、私は紅茶の準備をする。
今日は…アールグレイでも飲もうかな……。
数分後、お茶をテーブルに運びに行くと、既にシーノが椅子に座って待っていた。
彼女は、三時のおやつを母親と一緒に食べるのを楽しみに待つ子供のような目で私を迎え、紅茶の香りに顔を綻ばせる。
「いただきます!」
二人で手を合わせてお決まりの挨拶をすると暫しの談笑を交えてパンを頬張った。
流石、というべきか、購買で売られていた、料理部お手製の菓子パンは絶妙な味で、これが『ほっぺたが落ちる程美味しい』という事なのだと実感させられる。
夜も耽る頃、シーノは自室に帰って行った。
私にノートを借りて。
誰も居ない部屋。一人では広く感じる部屋。静かな一人部屋。
窓の外では草木がザワザワと不気味に笑い、悲痛な感情を乗せた荒ぶる風が窓を叩く。
何と無く、身震いした。
いつもと同じ筈なのに違う今日。
それは――不吉の始まりであり、新たな日々の始まりだった。
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