風邪

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時計の音しか聞こえない。 なんだろう。 寂しい。 そう感じてる自分がいる。 稜くん。 どこ行っちゃったの? 「稜くん……」 お願いだから、早く帰ってきて。 「稜くん……っ」 寂しいよ 苦しいよ 「稜くん……っ!」 あたしの側から離れないで 「稜くん!!!」 稜くんの名前を叫ぶと、稜くんがあたしの部屋の扉を勢い良く開けた。 あたしの目から涙が零れ落ちた。 「唯?」 少し息切れしてる稜くん。 その手には、コンビニの袋。 コンビニ、行ってたんだ……。 安心したら涙が止まらなくなった。 そんなあたしを、稜くんが優しく抱きしめてくれる。 「稜く……」 「コンビニ行ったら、なんか唯の声が聞こえて」 「え……?」 「わかんねえけど、急に心配になって、急いで帰ってきたら」 「うん……」 「案の定、唯泣きながら俺の名前呼んでるし」 「うっく……えっく……」 「どうした?」 稜くんがあたしの顔を両手で挟んで覗き込んできた。 目の前に心配そうな稜くんの顔がある。 どうして、風邪をひくと大胆になれるんだろう。 甘え上手なあたしになれるんだろう。 あたしは稜くんの手を掴んだ。 .
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