悩める少年① 反町紫苑の場合

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††† 反町家のパソコンは二階の書斎にあった。 滑り込むように父親の部屋にはいると、部屋の隅に壁にくっつけるようにして配置してあるデスクと、その上にあるパソコンの前に座る。 格別金持ちではない反町家では、パソコンを何台も所有できるわけなく、この少し古い型のデスクトップ型を家族全員で使っていた。 電源を入れて、パソコンを立ち上げる。画面が切り替わるとすぐに自分の環境に入った。 画面上に浮かぶ、小さな砂時計がもどかしい。 それが消えればすぐに、紫苑は迷うこと無くインターネットのアイコンをクリックした。 握り締めていたあの紙を見ながらURLを打ち込む。 Enterキーを押すときは、流石に手が震えた。 カチッ 音がして、その途端 「うわっ……えっ?!」 画面がブラックアウトした。 「う、ぇえっ、ちょっ……壊れた?!」 焦る紫苑は躊躇いがちにパソコン上部を叩く。 しかし画面は黒一色のままだ。 「嘘だろ……どうしようこれ………」 頭を抱える紫苑の目の前で、黒い画面上に白い文字が浮かび上がってきた。 ひとしきりショックを受けていた紫苑も、顔をあげてそれに気づく。 「あ……壊れてない…?」 喜びもつかの間、浮かび上がってきた文字を見て慌ててキーボードに手を伸ばす。 【ID・パスワードを入力してください】 再び紙を見て、正確にそれを打ち込んだ。  
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