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「いってきます」
そう言って家を出ると、晴れやかな青空が広がっていた。
うーんと一つ伸びをして考えるのは、昨日の『明時学園』のホームページだった。
あのあと、片っ端からあのページを見た。
明時学園は伊豆諸島と小笠原諸島の間に位置する、『桃源島』という島に建設されていて、一応東京都に属しているらしい。
島、という立地には当たり前だが、明時学園は全寮制だ。入学したら卒業まで外には出れないと書いてあったが、それはこの学校へ入学したいという思いを打ち砕くのには不十分だった。
初等部から中等部、高等部までと一貫しているようだ。高等部を卒業すれば、そのままいける大学もある。
学校の周りには街が広がっていて、一種の学園都市になっているらしい。必要なものは全てそこで揃うし、何も問題ないとホームページには書いてあった。
どれ一つ取っても、紫苑にとってますます明時学園に行きたいという気持ちが増すものばかりだ。
後は親だよな、と少し考えていると、向こうの道路から人影が手を振ってこちらに近づくのに気づいた。
「紫苑ー!」
紫苑も手を振れば、凄い勢いで人影は近寄り、紫苑の目の前でピタッと止まると二っ、と笑って元気良く言った。
「よっ、おはよ!!」
明るい茶髪に、片耳に2つ空けたピアス。切れ長の瞳はキツい印象を与えかねないが、彼の口からちらりと見える八重歯が全体の印象を和らげる。
一見すれば明らかに『不良』のこの人物は、紫苑の数少ない親友と呼べる人間である。
谷原秋(タニハラミノル)。彼の名前だ。
「おはよ」
紫苑もそう返し、二人で学校に向かって歩き出す。
秋と紫苑は、小学校からの幼馴染みだった。
小5の時、秋が転校生として同じクラスに来てから、ずっと同じクラスという恐ろしい道を辿っている。
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