悩める少年① 反町紫苑の場合

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††† 「何だかなー」 二階の自室。そのベッドの上に寝転がりパンフレットを見ていた紫苑は、そう言うともう読み飽きてしまったパンフレットをベッドの上に投げ出した。 先程届いた桃色の封筒には、明時学園についてのパンフレットが一部、入っていた。 その聞いたことの無い学校名に少しの期待を抱きながらページを捲った紫苑だったが、ありふれたそこら辺の学校と対して変わらない、当たり障りの無いその内容に、さっきの疼くような感覚は何だったのかと少し拍子抜けした感じが否めない。 紫苑は、至極平凡な少年だった。 外見普通。性格も当たり障り無くまぁ普通。家庭もごく一般的。父親は会社勤めのサラリーマンだ。 特にこれといった趣味はない。問題を起こしたこともない。 これほどまでに、『人生山あり谷あり』の言葉が似合わない人間はいないんじゃないかと自分でも思ってみたりする。 そんな自分が嫌いなわけではない。 ただ、少し焦っていた。  
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