201X年

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彼女が森を出ると、小鳥たちが彼女の側に集まってきた ユタは人間であって人間ではない ユタは全ての動物に愛される力を持つ そして、逆に愛する力をも持つ ユタは動物にとって澄んだ空気のような存在である 彼女は小鳥たちとじゃれあいながら歩いていく バタバタバタバタ 突然小鳥たちが飛び去った 人の気配をいち早く感じたからだ すると、曲がり角から犬をつれたおばさんが出てきた 「おはようございます」 彼女はおばさんに挨拶をした 「あら、おはよう。しおんちゃんも朝のお散歩かしら」 「ええ、そのようなものです。朝の空気が吸いたくて。これからは暑くなる一方ですから、今の内に吸っておこうと思って」 「そうよね~、冬を越えてやっと春が来たと思ったらすぐ夏ですものね。しおんちゃんはもう高校三年生になるのよね?」 「はい、そうです。」 「大変そうね~。受験もあるし。今日から新しく一年が始まるのよね。勉強がんばってね。それじゃ」 「はい、ありがとうございます」 おばさんが姿を消すと、小さくため息をついた。 (できれば誰にも見られたくなかったのに)
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