第三章 殺害動機

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   それから、酒口はやけ酒とばかりに次々と酒を飲み干し、早々に潰れてしまった。  また、有実も酒口に付き合いつつ酒出に飲まされ、こちらもカウンターに突っ伏した。  ホロ酔いの松本は幸せそうな顔で、酒出の飲む酒を作りながら恋女房を気取っていた。  だが、酒出は色っぽい展開を回避する。 「これで捜査本部は、また松島 美和を中心に捜査していくだろうな」 「そうですね……」  松本は、頬を膨らませつつ返事した。  妻子ある酒出に恋心を抱くのは、警察官としても一般社会に於いても、決して許される事ではない。  だが乙女心としては、せめて一時でもと淡い気持ちを抱くが、それをはぐらかされたのだ。  頬を膨らませるくらいしか、抵抗する術が無いのだ。 「しかし、本当に松島 美和だけなのか?」 「警部補、それは?」 「これだけ、色々と仕出かしてきた男だぞ。他に何か出てきても、不思議じゃないだろ」 「それはそうですが実際に、動機がありそうな人物を絞り込むだけで一苦労です。他になど……」
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