第三章 殺害動機

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   今回の事件の責任者である、千葉県警の柿崎警視にしてみれば遺体は、松島 美和で無く別人であってほしかった。  美和殺害の犯人は、被害者の野口だろうと考えており、最重要参考人と見ていた人物が消えるのだ。  そうなると、野口の周辺にいる殺害の動機がありそうな人物は、参考人としては今一つ決め手に欠ける。  そうなれば、捜査は大幅に遅れる。  美和に身内や恋人がいれば良かったが、その存在は未だ確認されていない。 「松島 美和の事件の捜査本部は、本当に合同で良いのですか?」 「えぇ、こちらの事件と全くの無関係とも言えませんし、野口の犯行だと断定されれば、すぐに被疑者死亡で送検しますから」  柿崎の捜査参謀を勤める刑事が、一礼して捜査本部を後にした。  合同捜査にする為、関係各所に通達に行ったのだろう。 「しかし、参りました……」  残された柿崎は、額に手を当て呟く。  重要参考人が死亡となると、関係者の人間関係を一から洗い直して、早急に捜査を立て直さなければならない。
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