第三章 殺害動機

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   捜査を立て直すのに、どれだけの時間と労力が必要になるだろうか。それに導入される、捜査員は何名必要だろうか。  それを考えるだけで、柿崎は頭痛がしてきそうになる。  何より、今回の事件で野口の足取りと美和の人間関係は、余りに手掛かりが無さすぎる。  頼みの酒出も、未だ何も言って来ない。 「あの人は、何をしてるんですかね」  先日、八千代署に乗り込んできた時には、何も言わずに大槻 有実を連れて帰った。  そして、美和の遺体が発見されても姿すら見せない。  刑事の事件捜査の鉄則は、現場百回などと言うが酒出は下手をすると、現場に一度も現れずに事件を解決する。 「実績があるから良いようなものを……」  昨夜の八千代署での中村警部補との悶着も、苦し紛れに助け船を出したが中村の言い分はもっともだった。  そろそろ、何かしらのアクションが欲しい。  それが、追い詰められた柿崎の本音であった。 「警視、野口の生家から新しい遺留品が出ました」 「遺留品、何です?」
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