第三章 殺害動機

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  「それでは、私から指示を出しておきましょう。それで、北方さん酒出さんは?」  柿崎は、手近の刑事に目配せし家宅捜索を指示した。  その上で北方に顔を近付け、あえて役職名では無く「さん」と呼んだのは、あくまでも公的な質問では無く私的な質問であるとのアピールだった。  北方も、心得たとばかりに答える。 「いつも通り、勝手をやってます」 「何かを掴んでいる様子はありますか?」 「さぁ、どうでしょう。柿崎さん、大分痺れてきてますな」  北方も役職や敬称を取り除き、戦友とばかりに答えた。  それは、勿論小声での受け答えであり、周囲の刑事に聞こえたら顔色が変わるような大事件だ。 「昨夜の中村さんの件は、聞いていますよね」 「えぇ、大まかには。酒出にしては、いささか珍しい行動だとは思いましたがね」 「酒出さんの行動自体を、どうこう言うつもりはありません。ただ中村さんと同様に、酒出さんのやり方を面白く思わない人間は、県警の上層部にもいるんです」 「そりゃまぁ、そうでしょう」
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