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「それでは、私から指示を出しておきましょう。それで、北方さん酒出さんは?」
柿崎は、手近の刑事に目配せし家宅捜索を指示した。
その上で北方に顔を近付け、あえて役職名では無く「さん」と呼んだのは、あくまでも公的な質問では無く私的な質問であるとのアピールだった。
北方も、心得たとばかりに答える。
「いつも通り、勝手をやってます」
「何かを掴んでいる様子はありますか?」
「さぁ、どうでしょう。柿崎さん、大分痺れてきてますな」
北方も役職や敬称を取り除き、戦友とばかりに答えた。
それは、勿論小声での受け答えであり、周囲の刑事に聞こえたら顔色が変わるような大事件だ。
「昨夜の中村さんの件は、聞いていますよね」
「えぇ、大まかには。酒出にしては、いささか珍しい行動だとは思いましたがね」
「酒出さんの行動自体を、どうこう言うつもりはありません。ただ中村さんと同様に、酒出さんのやり方を面白く思わない人間は、県警の上層部にもいるんです」
「そりゃまぁ、そうでしょう」
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